【体験記】在宅勤務with家庭保育-登園自粛の49日間-
はじめに
緊急事態宣言と登園自粛
新型コロナの拡大に伴う緊急事態宣言を踏まえ、筆者の自治体では保育園の登園自粛要請が出されました。
当初は4月9日から5月6日まででしたが、緊急事態宣言の延長に伴い5月30日まで延びました。緊急事態宣言の解除後の6月以降、やや緩和される気配も見えますが、引き続き登園自粛が要請されています。
新型コロナ影響は激甚かつ広範囲であり、医療従事者や社会機能維持者で引き続き勤務が必要な方、自粛要請で営業や仕事を控えることになった方、リモートワーク環境が整わず止む無く出社して業務された方、それぞれが様々な困難に直面されたと思います。
筆者はそのどれでもなく一般事業会社で在宅で通常勤務を続ける形になりました。ただ妻が医療従事者で仕事を休むことができない一方で、未就学児(3歳)が1人いるため、筆者が自宅で保育することにしました。
“在宅勤務with保育”の始まり
筆者も何日か有給休暇は取ったり、妻が半休を取得してくれたりしましたが基本的には、4月9日から5月27日までの49日間(営業日ベースで30日程度)、一度もオフィスに行かず/保育園に預けず、子供を見ながら仕事をして過ごしてきました。
同様の方は少なくないので、珍しい経験ではないかもしれません。またメインテーマの内部監査と直接関係しない内容になっています。
ただこうした環境下での仕事と生活の実情として、誰かの何かの参考になればと考え今回の経験をお伝え致します。業務内容や保育する子供の数、その他要因によって各環境は大きく変わると思いますので、一つの事例として見て頂ければ幸いです。
全体的な所感・効果的だった支援
全体的な所感としては、かなり疲れたが何とかなった、です。
最初は仕事をしながら子供の面倒を見るのは不可能ではないかと思っていましたが、何とか乗り切ることができました。これは私の力や工夫は微々たるもので以下の要素が大きかったと思います。
会社の環境整備
先ずリモートアクセスでのトラフィックに対応できるようにネットワーク環境を増強しストレスなく社内ITリソースにアクセスできるようにする、セキュリティ要件の一部緩和をする等、在宅勤務を行うためのリモート環境が有効に整備されていました。
また、緊急事態宣言以降、様々な家庭環境下で在宅勤務する社員への配慮のメッセージ等のケアもあり、心理的な安心感を与える効果がありました。
職場の理解
筆者自身の部署では、自分と同様の状況にある社員はあまりいませんでしたが、就業環境をよく理解してくれる社員が多かったことは大変ありがたいことでした。
自分のペースだけでは仕事ができず、会議中にも子供の声がしたり席を外す場面もでますが、そこも一種の「愛嬌」として受け入れてもらえることで、肩身の狭い思いをせずに仕事に取り組むことが出来ました。
家族のサポート
終業後は、そのまま洗濯・夕食・部屋の掃除・子供の風呂・着替え等の家事が行われます。
パートナーである妻も仕事から戻ってきたばかりで疲労していたと思いますが、これら家事を率先して対応してくれたり、労いの言葉を掛けてくれるなどしてくれました。
先の見えない中で、自身の労苦を理解してもらうことはとても心の支えになりました。
業務面・体調面での制約事項
一番苦しい時期は乗り越えたのかもしれませんが、この特異な環境では仕事の面で多種・多用な制約がありました。以下に紹介します。
集中力の制約
在宅勤務だけなら良いですが、小さな子供の保育をする場合はどうしても集中力を削がれてしまいます。これが仕事の上では最大の問題でした。
- 子供の見るテレビアニメ(しまじろう等)・動画が視界の範囲で再生される
- おむつ替え、食事・おやつの手配等が必要
- 子供の要望が不意急襲的に来る(遊んでほしい・ブロックを取り出してほしい・アニアの恐竜がなくなったので探してほしい・恐竜の図鑑から特定の恐竜を探してほしい・プラレール車両に電池を入れてほしい・転んで怪我した・ソファーからクッションにジャンプするのを見てほしい・・etc)
さらに近隣のマンション工事で作業音にさらされるというおまけつきでしたが、子供のためにイヤホンを付けるわけにもいかず苦慮しました。
集中して作業しつつ、子供を退屈させないように以下の工夫をしていました。試行錯誤でしたが一定の効果はありました。
■作業を20~30分単位に分割してその時間は徹底して集中する。以降の隙間時間に子供対応をする・集中力を回復させる。
■業務中は安易に子供に話しかけたりはしない。仕事をしているという態度を見せる。
■昼休憩時間をblockしそこは予定を入れないようにして、その間は子供と遊んで満足させる。
■正確性が必要な作業をする際は、子供が好きで集中できる本(昆虫シールブック等)の「切り札」を渡す。
休息の制約
一人での自由な休憩・休息がとれないことも、疲労感を高める要因になりました。
姿が少しでも見えなくなると子供はレーダーのように反応し、追跡を開始するので、手洗いを含めて一人になる時間が全くありませんでした。
自分のペースで過ごすことや適切なタイミングで休息を取ることが、生産性の観点では重要だと再認識しました。
作業場所・設備の制約
子供を目の届く範囲に置く必要があり、かつ遊んでもらう場所も必要なので、リビングテーブルで仕事をしていました。
職場と異なり、疲労軽減されるオフィスチェアでなくただの椅子に座り、サブディスプレイがなく小さなノートPCの画面を見て、袖机がないので資料が机に散らかる等、業務を進めるにあたって家庭は適した環境とはいえません。
「生活」する場と「仕事」をする場の違いを改めて感じさせられました。
ネットワークの制約
自粛期間中に、マンション設備側のネットワーク機器故障により2日程度インターネット回線が非常に不安定になりました。
手持ちスマートフォンのテザリングやモバイルルーターのレンタル等で対応しましたが、インターネットに繋がらないと基本的に業務ができず、それが一般家庭のインフラに依拠するというのは業務継続性上の問題として強く印象に残りました。
会社側も長期に渡る在宅勤務の社員に対しては、モバイルルーターの貸与等何らかの手当てが必要かもしれないと感じました。
子供の心身に関する懸念事項
在宅勤務下での保育はやはりコロナが産んだ変則的な形態なので、なんとか生活しているとはいっても、心身の発達や健康面等多岐に渡る懸念を感じました。主なものは以下のとおりです。
学習機会に関する懸念
勤務中は直接子供の相手をすることができません。また未就学児で集中して学習することは難しいので、おもちゃや絵本などをとっかえひっかえする形で遊んでもらっていましたが、これだけでは飽きてしまい、筆者に遊ぶようせがむ場面が多くありました。
このためAmazon Prime Videoでの本人の好きなアニメ(しまじろう等)や、you tubeの動画をかなり長く見せることが続きました。
視力の低下は勿論ですが、こんなにテレビを見せることはよい影響を与えないのではと懸念を感じました。
体力低下に関する懸念
不要・不急の外出はしなくとも、健康のためには一定程度散歩や何か運動をすることも必要と考えてます。しかし子供があまり外に出たがらないこともあり、早朝の散歩など限られた運動しかできず、体力の低下や健康に関して心配しました。
栄養バランスに関する懸念
昼食は2人きりなので筆者が用意しますが、バナナなどのフルーツ・パン又はおにぎり・ヨーグルト・おかず一品とかなり簡単なものか、テイクアウトのお弁当などで済ませることが殆どでした。
保育園のようなバランスの取れた食事を合わせたものにするのは難しく、栄養の偏りやバランスが気になりました。
ストレスに関する懸念
様々なストレス要因がある状況でしたが特に、保護者が近くにいるのに遊んでくれない、という状況はストレスを感じている様子でした。
また親としても構ってやれないことには申し訳なさを感じ、気持ちが苦しくなる場面もありました。
特に子供ながら(ある程度は)迷惑をかけまいとして耐える様子を見せるときがあり、切なくなりました。
最後に
今後の状況
緊急事態宣言は既に全国で解除されています。今後は社会・経済の活動もより活発になり、保育園の利用自粛が難しい方も増えるでしょう。
ただ保育園の登園自粛は自身と子供を感染しない/させないため、また保育園の感染リスクを上げないためにも引き続き一定の協力が必要だと考えます。もし感染によって臨時休園などが起きれば、医療や食料等社会機能の維持に必要な方達の活動にも影響を与えてしまいます。
他方で、在宅勤務下での家庭保育を過度に継続し続けることは、自身の業務面や子供の心身の発達・健康の観点からリスクのあることだと思います。
各自治体の案内にある『自宅で保育が可能な方』とは育児休業や特別休暇を取得した方達だけでなく、在宅勤務者も示唆しているようですが、コロナ以前も就業しているから子供を預けていたわけです。
在宅勤務者の保育利用
今後感染が一定の範囲で収束するか・第二波が来るかは予断を許さないところですが、「在宅勤務者」=「家庭保育可能者」とせずに、感染傾向を踏まえ在宅勤務者でも保育利用の考え方を具体的に示す時期には なっているのではないでしょうか。
筆者は子供一人でも相当な負荷を感じましたが、何人ものお子様を抱えて在宅勤務している方もいるでしょう。適切なケアがなければ、在宅勤務者も持たなくなってしまいます。
28日に自粛要請以降初めて1日子供を保育園に預けさせてもらいました。まだ要請下であるので少し悩みましたが仕事面でも精神的にも、正直本当に助かりました。
個人的に東京都中央区の案内文は共感しました。最後にこちらをご紹介したいと思います。インテントとマーカーは筆者によるものです。
「緊急事態宣言解除に伴う区内認可保育所の再開について(6月1日以降)」
(前略)
登園自粛の要請について
引き続き感染拡大には警戒を要する状況であり、当面の間(少なくとも6月30日(火曜日)まで)は「登園自粛要請期間」とし、保育料等は日割り計算します。
保育所の再開に当たっては、手洗い・消毒の励行、保育室の使い方や過ごし方の工夫など、可能な限りの感染症対策を実施しますが、保育所の特性上、子ども同士の接触などのリスクを完全に排除することは困難です。保育所で新型コロナウイルス感染者が確認された場合、完全休園となり皆様の生活に大きな影響を及ぼすことになります。
この要請は職業の違いや在宅勤務かなどによるものではありません。家庭保育が可能な日や、お子さま・ご家族が体調不良の場合の登園自粛、仕事が早く終わった時の早めのお迎えなど、皆様のご協力をお願いします。
このように利用日を限定する、預ける時間を短縮する等適切な協力をすることで、持続的なwithコロナ下での業務継続が実現できるのではないでしょうか。
内部監査の業務においても、在宅勤務者の労務管理や業務リスクについて検討する際、こうした個々の社員の状況も念頭に置くことが必要でしょう。
投稿者プロフィール
- J-SOXバブル時に内部統制コンサルに。以来通算13年間内部監査・内部統制・リスクマネジメント・セキュリティ業務に従事しています。
自身の学びも兼ねて、縁があって内部監査を始めよう/既にしている方達に少しでも役に立つ、現場の情報をお伝えしたいと思います。
【保有資格】
・公認内部監査人(CIA)
・公認情報システム監査人(CISA)
・内部統制評価指導士(CCSA)
・公認情報セキュリティマネージャー(CISM)
・Certified Data Privacy Solutions Engineer(CDPSE)
【所属】
・日本内部監査協会会員
・ISACA東京支部会員