内部監査人の面接対策-よくある質問と効果的なアピール-
内部監査部門への転職事情
内部監査部門への配属は、従来社内の人事異動で行われることが多かったようですが、近年は外部から経験者又は適正のある未経験者を採用する場合も増えています。
筆者はこれまでインターネット系サービスを行う事業会社での採用面接を受ける、或いは行う側としてトータルでは20件以上面接に関わってきました。
内部監査部門への転職を考える方への参考に、各面接の場で実際に質問される/された内容を採用背景・目的別に記載します。面接対策に役立てて頂ければ幸いです。
未経験者を内部監査スタッフとして採用する場合
内部監査人を中途採用する場合、経験者を募集することが多いですが「未経験者」の方の応募を受ける場合もあります。
未経験者の募集背景
これには下記のような背景があります。
- 一定以上の専門性を持つ者が内部監査部門の責任者となっている
- 監査部門の運営、監査の実務指導・レビューはできる体制になっている
- スタッフの欠員又はリソース不足が生じている
- 高度なスキルを要する内部監査を行うことが少ない(ISMS内部監査やJ-SOXでの運用評価、定期的に行う棚卸監査のようなチェックリストや評価手順が決まっている監査を任せる想定)
つまり主に部門責任者の指導を受けながら、手足として監査実務を行える担当者を探しています。
このケースでは以下のようなことを確認されるでしょう。(志望動機や自己紹介などの一般的な質問は割愛します。)
未経験者が面接で確認される事項
未経験者の場合はこれまでの業務と監査の親和性や、コミュニケーション能力などのヒューマンスキルが確認されます。このケースの背景上どちらかというと後者の方が重視される傾向があります。
- 事業内容に関する知見があるか/同業社からの転職か
- 財務・経理などの会計知識や業務経験があるか
- 現場部門としてJ-SOXでの統制文書化や評価業務の対応をした経験があるか
- 監査に類似するモニタリングや調査に関する業務経験があるか
- システムやセキュリティなどITに関する知見があるか
- コミュニケーション能力が高いか
- ロジカルシンキングが出来るか
- 指示に対して率直に受け入れる謙虚さがあるか/誠実そうか/過度な正義感や我の強さがないか
効果的なアピールのために
未経験者の場合、実務的な経験は問われないため、性格・資質的に監査スタッフとしての適性があるかが見られます。次のような点を意識して適切なアピールをするとよいのではないでしょうか。
〇正確性と速度が求められる業務の経験(検証能力のアピール)
〇重要性のある統計・調査のレポーティング経験、その際にした工夫
〇自部門内の業務改善を主体的にした経験・実績
〇小規模なプロジェクトを実質的に推進した経験
〇上長、関係部門に対して行った効果的なコミュニケーション、プレゼンテーション経験
上記に加え、面接の場では快活な受け答えや、「相手の話しをよく聞いている」姿勢を意識すると良いと思います。
経験者を内部監査スタッフ・リーダーとして採用する場合
経験者の募集背景
内部監査の経験者をスタッフ採用又は小規模なチームのリーダーとして採用する場合は、多様なケースがあります。以下の点は未経験者と同様です。
- 一定以上の専門性を持つ者が内部監査部門の責任者となっている
- 監査部門の運営、監査の実務指導・レビューはできる体制になっている
上記以外は募集にあたって多様なケースがありますが、大まかには以下のような背景に分けられます。
- シニアスタッフの異動・退職/事業拡大による拠点増加などに伴い、従来テーマの監査業務を任せられる人材が欲しい
- IPOを控えて、J-SOX対応やリスク管理態勢整備など幹事会社から要求される内部統制整備を推進したい
- 新規事業の成長や監査の高度化のため、従来行っていなかったテーマの監査業務を任せられる人材が欲しい(例えばfintech事業参入に伴う業法対応の一環として、システムやセキュリティ監査ができる人材を求める等)
- 組織の人員構成上、経験の浅いメンバーの指導も含めて監査チームを回せる人員が欲しい
いずれの場合も即戦力として、監査案件の個別計画策定から監査実施、監査報告、フォローアップまでを一元的に行える人材を探している点では共通です。
経験者が面接で確認される事項
このケースでは以下のように技能・スキル・経験・姿勢を幅広く確認されるでしょう。
- これまで担当してきた具体的な監査テーマ、案件数、監査経験の年数
- 各監査案件での具体的に担当した役割(主担当として取り回していたか or 副担当・補佐レベルか)
- 業界固有の法令・規則の理解
- 【システム監査の場合】プロセス監査だけでなく、実際のサーバ・ネットワーク機器の設定内容やコード実装状況など技術的な内容も検証できるか
- 監査業務において実施していた創意工夫
- 監査を通じて具体的に上げた成果
- 通常監査以外に、監査業務の企画、教育・研修・ガイドライン作成など業務改善をした経験
- セキュリティ管理部門、リスクマネジメント部門などの2ndラインとの協働経験
- コンサル会社への業務委託をして監査やモニタリングをした経験/外注管理能力
- 監査役、会社監査法人との折衝経験
- 被監査部門とのコミュニケーションで留意している事項
- マネジメント経験の有無、マネジメントした人数・職位
- プロジェクト管理の経験、プロジェクトの規模・ステークホルダー数
- 積極性、論理性、謙虚さ、誠実さ
効果的なアピールのために
経験者の場合はやはり即戦力性・専門性が一番求められます。特に自分自身で監査テーマやそれに適した監査基準を設定して、スタートからゴールまでを一元的に推進する実行力も重視されるでしょう。
面接の場では、具体的な成果やエピソードを説明しながら、能力や経験を適切にアピールすることが効果的でしょう。
下記のような経験があれば、効果的なアピールにつながるでしょう。
〇内部監査を通じて業務の有効性・効率性を向上させた具体的な事例、実績
〇多数の関係者を巻き込むプロジェクトのリーダー経験、QCDに関する実績
〇CEO、取締役への直接の報告・意見交換した経験、その際にした工夫
〇外部監査法人とのコミュニケーション経験
〇監査の立付に過度らこだわらず問題解決した経験と実績(※)
※内部監査は独立性・客観性を保つことが求められますが、小規模な組織等ではルール設計やシステム構築等を具体的に作成して主導的に推進することを求められる場合も少なくありません。
こうした際に「内部監査なので提案以外はしません」という態度は、あまり望まれていませんし、実際に指摘だけされても現場も困ることがあります。
「内部統制の成熟度に合わせて具体的な提案や主導的な推進が必要な場合は、求められる課題解決にコンサルティング対応をする」という実践的な立場を示すことがより良いアピールなると思います。
他方で主担当として被監査部門と接してもらう関係上、不要なハレーションを起こさないように、監査人としての誠実性や謙虚さ、コミュニケーション能力も依然として注視されることも意識が必要と思います。
最後に
内部監査人の採用は依然よりは活発になっていると思います。特に30〜40代前半での高度な内部監査の技能・経験を持つスペシャリストは、一定以上の需要があるようです。内部監査職への転職を検討する際、この記事が参考なれば幸いです。
※転職に際しては専門分野をしっかり持ったエージェントに業界事情や案件情報、キャリア相談をするのも有効な手段です。
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エージェントは現代では個人の転職活動には欠かせない存在でありとても助けになる一方で、利用には注意を要することもあります。
各人の事情・状況に合わせて検討ください。筆者は好むと好まざるとに関わらず転職をしてきましたが、転職はしないで済むならしない方がいいと個人的には強く思います。
[参考記事]
本記事を含む内部監査へのキャリア事情や働きやすさ、転職や面接についての纏め記事です。関連する記事がマッピングされているので良ければお読みください。
投稿者プロフィール
- J-SOXバブル時に内部統制コンサルに。以来通算13年間内部監査・内部統制・リスクマネジメント・セキュリティ業務に従事しています。
自身の学びも兼ねて、縁があって内部監査を始めよう/既にしている方達に少しでも役に立つ、現場の情報をお伝えしたいと思います。
【保有資格】
・公認内部監査人(CIA)
・公認情報システム監査人(CISA)
・内部統制評価指導士(CCSA)
・公認情報セキュリティマネージャー(CISM)
・Certified Data Privacy Solutions Engineer(CDPSE)
【所属】
・日本内部監査協会会員
・ISACA東京支部会員