内部監査人の年収構造-評価・賞与・給料-
内部監査人の年収は?
「内部監査」という仕事をしている人は、どのくらい給料をもらっているのでしょうか?
doda が2020年1月に公表したランキング(※)では、全167職種のうち、なんと「内部監査」は第3位(709万円)に入っています。
※ 「平均年収ランキング 最新版」https://doda.jp/guide/heikin/
ちなみに1位は「投資銀行業務」(843万円)、2位は運用(ファンドマネジャー/ディーラー)」(720万円)と納得の仕事。個人的には「内部監査」が高い報酬を得る仕事としてランクインされるのは違和感を感じています。
一方で下記のデータによれば、内部監査職種への平均年齢は「47.4歳」となっています。
「doda 職種図鑑 内部監査」https://doda.jp/guide/zukan/031.html
かなり年齢層が高いことが分かります。内部監査の平均年収が高いのは「仕事」に対してというより、元々年収が高くなる年齢層の人材が就業していることが理由ではないでしょうか。
ここでは給与を構成する様々な要素について昇給機会やボーナス水準を含め、目標管理制度を導入している一般的な上場事業会社を念頭に事例を紹介します。
給与の構造と体系
基本的な給与水準
日本の事業会社では内部監査は閑職のイメージがありますが、給与水準が他部門と比べて低いことはあまりありません。他の人事や経理など管理部門と基本同等です。
内部監査という仕事をする人は、ジョブローテーションの一環で社内の人事異動か、前職の経験を買われて専門職として中途採用されるか、いずれかの形で内部監査部門に配属されるケースが殆どです。
社内異動でも特別な理由なく給与が下がるケースはなく、中途採用の場合も他の仕事と同様前職考慮で給与は決まります。
勿論前職では内部監査リーダーであったが、転職後は部長級の内部監査室長になるなどポジションが上がれば相応の給与が提示されます。
昇給
会社によりますが昇給機会は営業やエンジニアなどのフロント部門はおろか、他の管理系部門と比べても相対的に限定的な場合が多いです。
現業を持たず独立した組織・業務をする内部監査は究極のコストセンターです。これは他のコーポレート部門とも一定程度事情は共通ですが昇給のための予算枠を他部門より高く持つことは先ずありません。
また内部監査の品質や効果が理解されにくく、成果の評価が難しいという理由もあります。これにより昇給機会が他職種と比しても少ない傾向があります。
逆を言えば決められた手順やルールに則して業務をしている限り、著しく低い評価や減給をされる可能性も低いでしょう。
上がりにくく、下がりにくいというところでしょうか。評価については下記の記事に詳しく記載していますのでよければ合わせてお読みください。
賞与
内部監査固有の特性について述べる前に、事業会社での賞与計算の形式の一例を説明します。
通常各社は基本的な賞与支給の方針を持っています。例えば賞与は半期に1回、標準的な成果を上げた社員には給与の2カ月分を賞与として支給する等です。
これに加えて目標評価制度での個人目標の評価結果と、予算枠に基づく各部門の賞与係数が乗じたものが賞与になります。補足すると目標評価制度を実施する会社では成果を5段階くらいに分けて評価し、それが賞与の係数になります。
- 評価S(特別優秀な成果):係数1.5
- 評価A(優秀な成果):係数1.2
- 評価B(標準的な成果):係数1.0
- 評価C(劣る成果):係数0.8
- 評価D(著しく劣る成果):係数0.6
纏めると賞与の計算式は下記のような形になります。
・賞与計算式:本人の月給×2×個人目標評価の係数(0.6~1.5)×部門係数(0.9~1.1)
しかし、前述のとおり内部監査部門は部門係数が高く設定されることがあまりなく、評価の難しさから、上記でいう「S」や「A」の評価を取れないため、「B」(たまに「C」)の評価になるケースが多いです。
ただ逆に極端に悪い評価(「D」)も付きにくいです。監査が一通り完了していれば相対的にはあまり傾斜なく支給されます。
業務の性質上インセンティブのような制度もない場合が殆どであり、通常の賞与レートがそのまま適用されます。大きな成果を出して賞与を多く支給されたいという希望は、残念ながら内部監査では叶えられないでしょう。
役職別の年収イメージ
各社の給与水準によりますが、内部監査の職位・役割別の年収イメージは下記のとおりです。
■スタッフ:現場往査の担当。シニアスタッフの指導を受けて比較的定型的な作業に従事するクラス:400~600万円
■シニアスタッフ:監査案件の主担当(主査)。計画案の策定からヒアリング、レポーティングを含む一連の監査作業の実務主体となるクラス:500~700万円
■マネージャー:3~10名程度のシニアスタッフ・スタッフを率いて、 機能単位の職能組織に区分された担当領域の責任者となるクラス。業務監査チームのリーダー、J-SOX評価グループマネージャー等:700~1000万円
■内部監査部門長/上級レビュアー:内部監査全体の部門責任者又は高い専門性を持ち部門のディレクションや組織開発・レビュー責任を持つスペシャリスト。:800~1500万円
最後に
内部監査人の給料は基本的に他の管理部門と同様に安定していますが、他方で著しい差がつく評価のしづらさ等から高い賞与を得られる仕組みを持つ会社は殆どないのではと思います。
とはいえ、最近はメリハリのつく評価方式を採用する会社もあり、それが内部監査部門に適用されているケースもないわけではないので、もし転職を考える際はどのような評価形態になっているかも確認してはいかがでしょうか。
[参考記事]
本記事を含む内部監査へのキャリア事情や働きやすさ、転職や面接についての纏め記事です。関連する記事がマッピングされているので良ければお読みください。
投稿者プロフィール
- J-SOXバブル時に内部統制コンサルに。以来通算13年間内部監査・内部統制・リスクマネジメント・セキュリティ業務に従事しています。
自身の学びも兼ねて、縁があって内部監査を始めよう/既にしている方達に少しでも役に立つ、現場の情報をお伝えしたいと思います。
【保有資格】
・公認内部監査人(CIA)
・公認情報システム監査人(CISA)
・内部統制評価指導士(CCSA)
・公認情報セキュリティマネージャー(CISM)
・Certified Data Privacy Solutions Engineer(CDPSE)
【所属】
・日本内部監査協会会員
・ISACA東京支部会員