【ケーススタディ】内部「監査」のイメージ-特殊詐欺の事例から-

「監査」のイメージは?

エンロンやワールドコムの破綻等に伴い米国での内部統制制度の確立、及び我が国でも2008年の金融商品取引法改正、いわゆるJ-SOX制度の施行以来、内部監査は独立した内部統制の整備・運用状況評価の担い手として注目が集まり、内部監査部門の地位も一定の向上を見ています。

近年は単なるルールの検証者ではなく、信頼できるアドバイザーや企業のリスク管理に対する斥候役など多様な期待が寄せられている一面もあります。

しかし、世の中的には監査は「警察」的なルール違反の摘発者、不正調査の告発者としてのイメージが強いのではないでしょうか。それを感じさせるニュースがありましたのでご紹介します。

ケーススタディ:特殊詐欺グループの脅迫と監査

事案『名簿に“70-80代女性2万4千人分”の個人情報…特殊詐欺グループの男3人再逮捕 100万円騙し取る』

上記は東海テレビによる報道です。高齢の女性からお金を騙し取ろうとしたようです。

以下ニュース記事からの引用です。(2020年4月5日現在はリンク切れです。)

『逮捕されたのは、住所不定の無職・野瀬祥紘容疑者(36)ら男3人です。』
『3人は今年1月22日、他の者と共謀し、東京のマンションの一室で84歳の女性に「会社の監査があり、100万円を用立ててほしい」などと甥を装ってウソの電話をかけ、現金100万円を騙し取った疑いが持たれています。』https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200213-00026743-tokaiv-soci

「監査」のイメージは不正調査が強い?

この事件は被害者の親族を装った詐欺なので、いわゆるオレオレ詐欺の派生といえるでしょう。

監査が入ることと現金が必要な理由との関連性はこの記事では明確にされていませんが、「会社のお金を使い込みしたのでその穴埋めにどうしてもお金が必要!」などと言って騙した可能性が高いと思います。

国内の一般事業会社の内部監査部門では、重要なルールに対するアシュアランス型や、業務プロセスの改善を目的としたコンサルティング型の監査が主流で不正調査を目的とした監査は殆どされていないでしょう。

関連したテーマの検証の際、偶発的に不適切な処理を見つけることがある程度ではないでしょうか。

しかしながらこの事件では明らかに「監査」という用語が、人を畏怖させるような不正摘発のニュアンスで使用されています。

監査で告発されそうになるから、その前に取り繕おうという弁明が人を騙してしまうのですから、一般のイメージはこうしたものなのでしょうか。

最後に

不正の摘発は内部監査の一側面に過ぎないはずです。

しかしこうした印象がまだまだ先行するならば、内部監査の発展にとっても好ましいことではないでしょう。

一定の威厳や誇りは持ちたいながらも、過度に人を萎縮・緊張させないコミュニケーションや振る舞いが個々の内部監査においては重要ではないでしょうか。

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投稿者プロフィール

ネット企業の監査人
ネット企業の監査人ネット系事業会社 内部監査室 室長
J-SOXバブル時に内部統制コンサルに。以来通算13年間内部監査・内部統制・リスクマネジメント・セキュリティ業務に従事しています。

自身の学びも兼ねて、縁があって内部監査を始めよう/既にしている方達に少しでも役に立つ、現場の情報をお伝えしたいと思います。

【保有資格】
・公認内部監査人(CIA)
・公認情報システム監査人(CISA)
・内部統制評価指導士(CCSA)
・公認情報セキュリティマネージャー(CISM)
・Certified Data Privacy Solutions Engineer(CDPSE)

【所属】
・日本内部監査協会会員
・ISACA東京支部会員

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